Vol.8 | 株式会社 仙台にしむら
マクドナルド ザ・モール仙台長町店 チャレンジクルー/尾形菜々さん
マクドナルド ザ・モール仙台長町店 チャレンジクルー/片桐風優奈さん
株式会社仙台にしむら マクドナルド ザ・モール仙台長町店店長/市川亜友美さん
さまざまな人と協力して働くのが喜び!
マクドナルド ザ・モール仙台長町店 チャレンジクルー/尾形菜々さん
商品づくりをメインに簡単な接客も。
宮城県内にマクドナルドのフランチャイズ店舗を16店舗展開する、株式会社仙台にしむら。同社は障害者雇用に積極的で、障害者実雇用率は11.04%と、法定雇用率2.3%(取材時点)を大きく上回っており、支援学校などからの実習の受け入れも行っています。
マクドナルドでは、障害を持つ従業員を「チャレンジクルー」と呼びます。2022年から「マクドナルド ザ・モール仙台長町店」で働く尾形菜々さんもその一人。普段はハンバーガーやサイドメニューの製造を中心に行い、トレーナーとして経験の浅いスタッフへ仕事を教える役割も担っています。「お客様がハンバーガーを食べて喜ぶ姿を想像しながら、みんなと協力して作るのがやりがいです」と尾形さん。
また、店舗で働く外国人スタッフとの交流も楽しいといい、店のタブレットで動画を見せながら作業について教えることもあるそうです。「人に何かを教えるのも好きですし、その人がちょっとずつ成長しているのを見るとうれしくなりますね」。
お客様を笑顔にするおもてなしを!
マクドナルド ザ・モール仙台長町店 チャレンジクルー/片桐風優奈さん
ハンバーガーのトッピングの技術は店でトップ!
片桐風優奈さんが「マクドナルド ザ・モール仙台長町店」でチャレンジクルーになったきっかけは、支援学校の実習生として店舗で働いたことです。「最初は緊張したんですが、店長の市川さんやマネージャーがとても優しく色々なことを教えてくれたので、ここで働きたいと思うようになりました」。
片桐さんは集中力が高く、ハンバーガーの製造技術を競う店舗内のランキングでトップという腕の持ち主です。「店のタブレットでトレーニングするのが楽しい」といい、その日うまくできなかった作業があると、タブレットで一人反省会を行うそうです。
仕事を通じて、初対面の人とも交流できるように。
取材中に時折、緊張した表情を見せる片桐さん。元々、人見知りな性格で、店長の市川さんによると、初めて会った時には、恥ずかしがって挨拶もなかなかできなかったそう。しかし、店舗でさまざまな人とコミュニケーションを取るうちに他人と接するのにも慣れ、近頃ではカウンターで接客まで行うこともあるといいます。「初めの頃よりはだいぶ人と話せるようになって、初対面の人にも自分から話しかけられるようになりました」。
誰も取り残されない店づくりを実践!
株式会社仙台にしむら マクドナルド ザ・モール仙台長町店店長/市川亜友美さん
インクルージョンな店を目指して。
「マクドナルド ザ・モール仙台長町店」では、社員とアルバイトあわせて50人ほどのうち、外国人が25人、障害者が3人、さらに65歳以上の高齢者など、多様な人材が働いています。同店で店長を務めているのが市川亜友美さんです。専門学校で保育を学んでいたという市川さんは、マクドナルドで宮城県立こども病院に携わる機会があることを知り、2011年に仙台にしむらに入社。「色々な人が働ける環境をつくりたい」という思いを持って、仕事に臨んできました。
「専門学校の実習で障害者施設を訪れた時、『自分ができることってなんだろう』と考えさせられました。そこで私の保育の資格や学びをいかして、誰も取り残されない店にしようと決意して、ダイバーシティを意識し、当時店に1人もいなかった外国人の採用からスタートしました」。
当初は受け入れられるまで時間がかかったそうですが、市川さんのサポートによって、本人が成長する様子を見て、次第に周囲も協力的になったといいます。「インクルージョンな店にするために、その人ができないことではなく、できることにフォーカスしようと考えました」と市川さん。この成功体験がチャレンジクルーの積極的な採用にも繋がっていると話しました。「例えば掛け算が苦手とか、漢字が読めない人であれば、簡単な言い方に変えてみたり、ふりがなをふってみたり。店ができることをした上で、マクドナルドには作業がたくさんあるので、その人の得意なことをやってもらうようにしています」。
能力が発揮できるように全員でサポート。
一人ひとりが働きやすい職場にするため、市川さんが大切にしているのがコミュニケーションを密にとることです。
「普段からのやり取りはもちろんですが、業務に慣れるまで1週間に1回はコミュニケーションをしっかり取る時間を確保して、相手のバックボーンや気持ちを理解するとともに、私がどんな人間なのか知ってもらって信頼関係を築いています。そして、その人の苦手なことや気を付けておくことがあれば、みんなで共有しています」。
さらに半年に1回、本人の自己評価や希望、店が求めることをすり合わせる面談を実施するなど、障害の有無に関係なく、能力が発揮できるまで全員でサポートする体制が整っています。
「障害者だから」という固定概念に縛られない。
社会的に障害者雇用のハードルの一つとなっているのが、事故などのトラブルを恐れ、採用に踏み込めないことです。その課題解決のヒントを市川さんに尋ねました。
「『障害者だから』という固定概念に縛られず、まずは本人にやりたいことを聞いて挑戦してもらうのが一番いいと思います。その時に危険や心配なことは説明しますし、その上で本人がやりたいといえば、店としてフォローできることを考えればいいのではないでしょうか」と市川さんはいい、店での事例を紹介してくれました。
「店に運動失行の症状をもつチャレンジクルーがいるんですが、本人の希望で力がいる油掃除を担当してもらっています。一般的なイメージだと、そういった人に力仕事なんて危ないと思うかも知れませんが、本人は全然苦じゃないと前向きに取り組んでくれて、とても助かっているんです」。
また、市川さんは「ちゃんと“つまずかせる”ことも大切にしています」と続けました。「サラダを作るのに時間がかかるチャレンジクルーがいたので、その工程を見てみると、実ははさみを探すことに毎回時間がかかっていたことがわかりました。上手くいかないことでもそこで諦めるのではなく、まずはやってみて問題点を把握することで『じゃあ、この場所に置けば使いやすいよね』と店として改善点に気付くことができます、また、マニュアルに抜けている部分を見つけることができ、それを補足・共有することで誰もが働きやすい環境につながります」。
多様な人材が働くことで雰囲気のよい環境に。
市川さんは多様な人材が一緒に働くことで、店舗の雰囲気がよくなったと手応えを感じています。「私が初めて店舗に配属された時は完璧であることが求められていて、緊張感がありました。それが色々な人たちが入り、互いを認め合うことで『私も完璧じゃないし、みんな完璧じゃないよね』『上手くいかないこともあるよね』と、みんなの心が寛大になった気がします」。
そして「何よりもうれしい」と感じているというのが、それぞれが仕事に目標や誇りを持って働いてくれていることだと言います。
「ただ働くだけじゃなくて、自分はこうなりたいっていう目標を持って働いている人が多いと思います。また、みんな家族や日本語学校の先生を店舗に連れてくるような間柄になっています。それもあって、近くでイベントがあって忙しい日などにも「みんなで頑張ろう!」とチームワークを発揮して働くことができています」。
ロールモデルを育てて、もっと働きやすい会社へ。
今後の目標について市川さんは同店で活躍する障害のある人をロールモデルとして、他の店舗でも、より一人ひとりが働きやすい環境づくりを進めるきっかけにしたいと話しました。
「うちの店のチャレンジクルーが他の店舗のヘルプに行ったりして、がんばっている姿を見せることで、インクルージョンな意識があれば、こんなに活躍できるんだと多くの人に感じてもらいたいですね。そのためにロールモデルとなる人材を育てていければと思っています」。理想とする店づくりを叶え、さらに広めようと考えている市川さん。最後まで明るい笑顔で答えてくれました。
周囲のサポートを受け、それぞれが新たな目標へ。
こうした環境の中で、クルーはそれぞれ目標を持って働いているといいます。
難しい言葉を覚えにくいという尾形さんですが、周囲のサポートに加え、自身で努力を重ねています。尾形さんが仕事する上で大切にしているのが、学んだことや感じたことをこまめにメモすること。「店に入ったときから、覚えたことを忘れないように一つひとつメモを取っているんです」。そう言いながら、少し恥ずかしそうに見せてくれたメモ帳には、ぎっしりと文字が並んでいました。
尾形さんは「トレーナーとして人に教えるのをうまくなりたいのと、もっと接客ができるように、コツコツがんばっていきたいですね」と努力家らしい答えを聞かせてくれました。
店内のオペレーションコンテストで受賞した赤のスターピンズを持つ片桐さんですが、新たな目標はマクドナルドのおもてなしリーダー「GEL」になること。「そのためにGEL専門のトレーニングをもっとしたり、苦手なことにも挑戦したり、がんばっていきたいです」と前向きな気持ちを話してくれました。
イメージ・ムービーを制作した学生より一言
東北学院大学3年/五十嵐 太郎さん
その人のできる・できないではなく、得意・不得意を見極めてマネジメントすることで、ビジネスとして上手く発展につなげている点に驚きました。また取材の合間も店長の市川さんと尾形さん、片桐さんが楽しそうにやり取りしている姿が印象的で、個々がその人らしく過ごすことの大切さを感じました。