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ニュースをつくる人たち

OpenVillageノキシタ

株式会社AiNest 取締役/阿部 恵子さん

Open Village ノキシタ 障害者サポートセンターTagomaru/鴇(とき) 雪子さん

Open Village ノキシタ 障害者サポートセンターTagomaru/牧 志保さん

Open Villageノキシタ 障害者サポートセンターTagomaru 利用者/加藤 宙歩(ひろむ)さん

障害のある人が「役割」を持って、生き生きと働けるように

障害のある人が高齢者、被災者とともに
クラフトビールに使うホップを栽培。

2022年5月の河北新報で、障害のある人と被災者が栽培したホップでクラフトビールを造るという、「OpenVillageノキシタ」の取り組みが紹介されました。

仙台市宮城野区田子西地区の住宅街の一画にある畑。ここで栽培されているのは、ビール造りに使用されるホップ。この苗の植え付けから、水やり、収穫まで行っているのは農家ではなく、障害のある人や高齢者、地域の人々です。収穫されたホップは一関市の世嬉の一酒造で醸造され、クラフトビール「Sendai ノキシタビール」として通販サイトで販売。2種類のラベルは知的障害のあるOpenVillageノキシタの利用者が描いたイラストを使用し、多くのメディアで取り上げられるなど話題になっています。

この活動を展開しているのは、ホップ畑から歩いて5分ほどの距離にある共生型複合施設「OpenVillageノキシタ」。敷地内には自由に集まって交流できる「コレクティブスペース エンガワ」、「障害者サポートセンターTagomaru」、「障がい者就労支援B型カフェ オリーブの小路」、「シャロームの杜ほいくえん」の4つの施設が建ち並んでいます。ノキシタは障害のある人、高齢者や子育て世代の人々が抱える社会課題に対して、既成概念にとらわれない新しい取り組みを行っています。

社会課題を解決するコミュニティの拠点として、
地域に開かれた施設づくりや活動に挑戦。

「ホップ栽培の目的は、大きく二つあります。一つはこの施設や活動を知ってもらうきっかけとして。そしてもう一つは、障害のある方や高齢者が作業に参加することで、社会の中で『役割』を持ってもらうことです」。そう説明するのは、ノキシタを運営する「株式会社AiNest(アイネスト)」の阿部恵子さん。これらのユニークな取り組みは、同社の代表取締役社長・加藤清也さんの体験が大きいと語りました。

1994年に始まった田子西地区の土地開発に、東日本大震災の後から関わることになった加藤さん。当初、この辺りには商業施設が建設される予定でしたが、造成工事中に東日本大震災が発生。沿岸の被災者が入居する災害公営住宅へ予定が変更されました。そして短期間に多くの人が移り住んだことから、次第に「周りに知り合いがいない」「集まる場所がない」といった課題に直面。また、自身にも軽度の認知症の父親と障害のある子どもがいることもあり、さまざまな社会課題に取り組む拠点として、2019年にノキシタをオープンしました。

活動の中で大切にしているのが、阿部さんが話す「役割を持つこと」です。「障害のある方や高齢者が、仕事などの役割をもって活動することで、生き生きと健康的に過ごせる社会を目指しています」と阿部さん。この考えも、子どもの入浴を父親にお願いしていたところ、次第に認知症が改善したという加藤さんの体験がヒントになっているそうです。「誰かに頼られたり、交流を深めることで健康になるという科学的なエビデンスもあります。実際にこの施設でも、自力歩行が困難な状態の方が『誰かに会えるから』と毎日のようにノキシタに通ったことで、介助なしで歩けるほどに回復したこともありました」。

今後について「今取り組んでいるのは、重度の知的障害のある方が働ける仕組みづくりです。一般的な仕事の価値観の中で重度の知的障害のある方が働こうとしても、どうしても限界があります。既成概念にとらわれることなく、障害のある方でも役割を持って働く機会を創出し、それを全国に広めていきたいですね」と阿部さん。障害の有無や性別、年齢などに縛られない、誰にでも開かれた場所として、前例のない新たな挑戦を続けていきます。

Open Village ノキシタ
障害者サポートセンター Tagomaru 鴇(とき) 雪子さん

自身が知らない世界に興味を持ち、福祉の道へ。

これまでにさまざまな所で働いてきたという、「障害者サポートセンター Tagomaru」のスタッフ・鴇雪子さん。「好奇心から色々な仕事をしていたのですが、福祉業界に入るきっかけは障害者施設で働いていた母親に『ちょっと遊びに来たら』と誘われたことです」。それまで福祉分野に携わったことはなかったといいますが、施設を訪れてみて「自分の知らない世界があるんだと興味を持って、すぐに私も働いてみたいと思いました」。その後、介護福祉士やヘルパーの資格を取得し、障害者施設で働き始めた鴇さんは、「仕事は本当に楽しいですね。障害のある方が何かを伝えたいのに伝えられずにいる時、言葉にならない想いを表現できるようにサポートすることが私のやりがいです」と語りました。

障害のある人の新しい働き方を模索中。

鴇さんは、「Tagomaru」のオープン時から勤務しており、主に利用者の自宅で生活をサポートする居宅介護にあたっています。また、それに加えて近頃は、ノキシタの大きな試みとして、障害のある人の新しい就労の仕組みづくりに牧志保さんらとともにチャレンジしています。「障害のある方でも、食べたいこと、見たいこと、やりたいことがあり、そこには当然お金が必要です。また仕事を持つことで社会の中で役割が生まれ、交流が広がっていきます」。

鴇さんと一緒に働き方を模索しているのが、重度の知的障害がある加藤宙歩さん。加藤さんはノキシタで過ごしながら、重度知的障害者ならではの仕事の可能性を探っているそうです。「例えば糊を付けるといった作業を高齢者らと一緒に行うことで生み出す効果を、障害者の仕事の価値として評価する新しい仕組みづくりに一緒に取り組んでいます。これまでの生活とは違うので慣れるのも大変ですし、まだ時間はかかると思いますが、障害のある方の働き方として、いいモデルになればうれしいですね」と鴇さんは今後に期待しています。

Open Village ノキシタ

運営統括/株式会社AiNest ※国際航業株式会社100%出資子会社
住所/仙台市宮城野区田子西一丁目12番4号
開所時間/9:30~16:30
WEB:https://www.ainest.jp/nokishita

イメージ・ムービーを制作した学生より一言
東北学院大学2年/伊藤 匠人さん

今回、最も印象に残っているのは、障害のある人が役割を持てるような仕組みづくりです。その中で高齢者など、色々な人との交流が広がることで、それが地域の活性化にもつながるということを学びました。私は将来、出身地の岩手県花巻で、地域の活性化に貢献する仕事に就きたいと考えています。その際に、ノキシタのさまざまな人を巻き込んだコミュニティづくりは、大きなヒントになると思います。

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